「自分は大丈夫」と言い張る親に、どう向き合うか

さっき話したばかりのことをまた聞かれる。約束していたことをすっかり忘れている。しまい忘れや置き忘れが目立つようになった——そんな変化に気づいていながら、「一度病院に行ってみない?」と切り出した瞬間、返ってくるのは苛立った声か、話をはぐらかす態度。「年のせいだ」「ボケてなんかいない」の一点張りで、同じやり取りを繰り返すたびに、こちらの気持ちもすり減っていく。この壁の前で立ち尽くしているご家族は、決して少なくありません。

本人にとって、認知症を認めるということは、自分がこれまで築いてきたものが少しずつこぼれ落ちていく恐怖と向き合うことに近いのかもしれません。だからこそ、正面から「病気だ」と突きつければ突きつけるほど、意地になって心を閉ざしてしまう。「認知症だと認めさせる」ことをゴールにしない——まずはここから力を抜いてみてください。本人のプライドと、言葉にならない不安の両方をそっとすくい上げるような「回り道」のほうが、結果として受診への近道になります。

物忘れが増えた親にそっと寄り添いながら話しかける家族
責めるのではなく、そばにいる時間を積み重ねることから。

受診につなげる5つのアプローチ

  1. 「認知症」という言葉を使わない

    「物忘れ外来」ではなく「健康診断」「生活習慣のチェック」「めまい・血圧の相談」など、本人が受け入れやすい名目で誘います。本人を否定しない入り口づくりが第一歩です。

  2. 本人が信頼する人から伝えてもらう

    子どもが言うと反発する場合でも、かかりつけ医・配偶者・きょうだい・本人が一目置く人からの一言なら届くことがあります。「誰が言うか」を変えてみてください。

  3. 「一緒に受ける」かたちにする

    「私も健康診断を受けるから一緒に行こう」と、本人だけを対象にしない誘い方は心理的な抵抗を下げます。付き添いではなく同行者として行くのがポイントです。

  4. かかりつけ医に先に相談しておく

    受診前に、家族から医師へ「最近こんな様子が気になる」と情報を伝えておくと、医師が自然な流れで認知機能の確認をしてくれます。事前の連携が成功率を高めます。

  5. 地域包括支援センターに相談する

    どうしても受診につながらない場合は、地域包括支援センターへ(出典:厚生労働省。受診の働きかけや、自宅訪問による相談など、家族だけでは難しい部分を支えてくれます。無料で相談できます。

認知症は、気づいたときから動き出すほど、本人にも家族にも穏やかな時間が長く残ります。無理に認めさせようとして関係がこじれてしまうよりも、多少遠回りでも親子の会話が途切れないことを守り抜いてください。受診できた日は終わりではなく、これから先を一緒に支えていく体制づくりの、最初の一歩に過ぎません。

受診が思うように進まず、次の一手に迷ったときは、LINEで相談するという方法もあります。