親が亡くなった、あるいは施設に入って、誰も住まなくなった実家。「すぐに決めなくていいか」「売るなんて薄情な気がする」——そんな迷いを抱えたまま、鍵をかけたきり半年、一年と足が向かなくなってしまう。そういう方に、これまで何人もお会いしてきました。
けれど、決めかねている時間の分だけ、空き家は静かにお金と手間を吸い取っていきます。固定資産税は誰も住んでいなくても毎年請求され、建物は少しずつ傷み、気づけば害虫や害獣が棲みつき、最悪の場合は近隣への倒壊リスクにまでつながります。「何もしない」が最も高くつく選択になりえます。
この記事では、空き家になった実家の4つの選択肢を費用・メリット・デメリットで整理します。「うちの場合はどれが正解なんだろう」と迷って当然です。まずは、自分が知らなかった選択肢がないかを一つずつ確認するところから始めてみてください。

| 選択肢 | 初期費用の目安 | 維持費用 | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| 売却する | 片付け費用(〜数十万円) | なし(売れれば) | 維持が困難・相続人が複数 |
| 賃貸に出す | リフォーム費用(50〜200万円) | 管理費・修繕費 | 立地が良い・将来戻る可能性あり |
| 解体する | 解体費用(100〜400万円) | 固定資産税(上がる場合あり) | 老朽化が激しい・土地活用を検討 |
| 維持・管理する | 清掃・修繕費(年10〜30万円) | 固定資産税・管理費 | 将来使う予定がある |
実家を不動産業者に売却する方法です。「育った家を手放す」という決断には、片付けや手続き以上の重さがあると思います。それでも、片付けを終えて売ることができれば、毎年の維持費や固定資産税の心配からは解放されます。立地が良ければ、まとまった資金を得られることもあります。
一つだけ、心づもりしておいてほしいことがあります。売却には遺産分割協議書(相続人全員の合意)が必要(出典:法務省「不動産を相続した方へ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」)な点です。「早く動きたいのに、きょうだいの一人と意見が合わない」——そんな理由で手続きが長引くケースも珍しくありません。また、売る前に家の中のものを全部片付ける必要があるため、その費用(数万〜数十万円)と時間が先にかかります。
実家をリフォームして賃貸物件として貸し出す方法です。「手放すのはまだ踏ん切りがつかないけれど、このままでは持て余す」という方によく選ばれています。毎月家賃収入が入る一方、入居者がいない空室期間は収入がなく管理費だけがかかる時期もあります。立地(駅からの距離・周辺環境)によって賃貸需要は大きく異なるため、期待どおりにいくとは限らない点も心づもりしておいてください。
リフォーム費用は50〜200万円程度かかることが多く、古い家ほど費用がかさみます。また、管理会社への手数料(家賃の5〜10%)も発生します。「貸せば何とかなる」という期待だけで踏み出すと、想定より手元に残らず後悔することもあります。「賃貸に出せば儲かる」と思い込まず、収支のシミュレーションを先にすることが重要です。
建物を取り壊し、更地にする方法です。生まれ育った家が更地になる姿を思い浮かべると、決断をためらう方も少なくありません。それでも、老朽化が激しくリフォームより解体の方がコストを抑えられる場合や、土地として売却・活用したい場合には、有力な選択肢になります。
解体費用は建物の大きさや構造(木造・鉄骨・RC)によって異なりますが、一般的な木造一戸建て(30〜40坪)で100〜200万円程度が目安です。金額だけでなく、税金面でも見落としやすい注意点があります。建物があるうちは固定資産税の軽減措置(住宅用地特例)が適用されますが、解体後は適用外となり税額が上がる(出典:総務省「固定資産税における特例措置」)場合があります。「壊してすっきりしたはずが、税金が上がって驚いた」ということのないよう、解体前に税務上の影響を確認してください。
「今すぐには決められない」「思い出が詰まっていて、まだ手放す踏ん切りがつかない」——そうした気持ちから、この選択をする方もいます。ただし、誰も住んでいない建物は思っている以上に早く傷みます。最低限、定期的な換気・清掃・点検(年数回の帰省または管理会社への委託)は欠かせません。
管理を業者に委託する場合は月1〜2万円程度、固定資産税も年間数万〜数十万円かかります。「まだ決めていないだけ」のつもりでいても、気づけば数年分の管理費と税金が積み重なっていた、というケースも珍しくありません。
「うちに限ってそこまでは」と思うかもしれませんが、管理が不十分な空き家は行政から「特定空き家」に指定されることがあります。指定されると住宅用地特例が外れ、固定資産税が最大6倍になります(出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」)。さらに勧告・命令・強制撤去の対象になることもあります。
誰も住んでいない建物は、換気・湿度管理がされないため驚くほど早く傷みます。雨漏り・シロアリ・腐朽——今なら100万円で直せる問題が、次に様子を見に行ったときには修繕不能になっていた、ということも起こり得ます。
空き家は犯罪の温床になりやすく、不法侵入・不法投棄の被害が多発しています。遠く離れて暮らしていると、そうした異変に気づくのも遅れがちです。また老朽化した建物が台風・地震で倒壊した場合、近隣への損害賠償責任を問われる可能性もあります。
売る・貸す・壊す・維持する——どれもすぐには決められない選択です。今日この瞬間に結論を出す必要はありません。ただ、判断を先送りにするあまり、家の中を一度も片付けないまま何年も経ってしまう、という状態だけは避けてください。まずは実家の中を見に行き、荷物を整理するところから始めれば、次にすべきことがおのずと見えてきます。
一人で抱え込まず、LINEで相談するという方法もあります。