保育園のお迎えに走る毎日のなかで、実家の親が転んで入院した。退院後は介護が必要で、でも小さな子どもからも目が離せない。仕事も家事も待ってくれない——。子育てと親(あるいは義理の親)の介護が同じ時期に重なる状態を「ダブルケア」と呼びます。晩婚化や出産年齢の上昇を背景に、30代・40代を中心に、こうした立場に立つ方は決して珍しくなくなっています。
ダブルケアの何よりつらいところは、「どちらも手を抜けない」と感じてしまうことです。子どもの成長も、親の老いも、待ったなし。けれど、あなたの体はひとつしかありません。この記事では、共倒れを防ぐための優先順位の付け方、使える支援制度、そして家族や自治体への頼り方を、実用的にお伝えします。一人で全部を背負わなくていい——まずはそこから始めましょう。
育児と介護を同時に背負うあなたは、本当によくがんばっています。全部を一人で抱えなくていいのです、頼れる手はきっとあります。
漠然と「しんどい」と抱え込むと、出口が見えなくなります。まずはつらさを切り分けてみてください。大きく分けると、時間・お金・心身の3つです。整理すると「どこから手を打てばいいか」が見えてきます。
時間の問題は、子どもの送迎・食事・親の通院や見守りが物理的に重なること。お金の問題は、教育費と介護費が同時にかかり、さらに離職や時短で収入が下がりやすいこと。心身の問題は、休む時間がなく、誰にも相談できずに孤立し、心がすり減っていくことです。なお、介護費用や利用できるサービスの自己負担は、要介護度・所得・自治体によって大きく異なります。金額はあくまで目安と考え、具体的なことはケアマネジャーや市区町村の窓口で確認してください。
すべてを完璧にこなそうとすると、いちばん先に倒れるのはケアをしている本人です。ダブルケアでは「優先順位を決めて、できないことは手放す・任せる」という発想が欠かせません。次の順番で考えてみてください。
利己的に聞こえるかもしれませんが、ケアの担い手が倒れれば、子どもも親も支えられなくなります。睡眠・食事・短い休息は、わがままではなく必要経費。ここを削らない前提で全体を組み立てます。
子どもの健康、親の服薬や転倒予防など、放置すると取り返しがつかないことを優先。逆に、家事の細部や「きちんとした介護」へのこだわりは、後回しでよい領域です。
送迎、買い物、見守り、掃除——あなた自身が必ずやる必要のないことを書き出します。これが、サービスや家族に任せる候補リストになります。
切り出したタスクを、介護サービス・保育サービス・家族・地域の支援に割り振ります。「頼む」と決めることが、ダブルケアを乗り切る最大のコツです。
「私がやらなきゃ」という責任感は、あなたの優しさの証です。けれど、その思いが強いほど抱え込みやすくなります。頼ることは、ケアを投げ出すことではありません。むしろ、子どもと親を長く支え続けるための、賢い選択です。完璧でなくて大丈夫。続けられる形を探しましょう。
ダブルケアでは、介護側・育児側それぞれの制度を組み合わせることがカギになります。代表的なものを挙げます(利用条件や自己負担はケースによって異なります。詳細は各窓口でご確認ください)。
介護側では、要介護認定を受ければ、訪問介護(ヘルパー)、デイサービス、ショートステイ(短期入所)などが介護保険で利用できます。親の見守りや入浴・通院をプロに任せられれば、その分の時間と体力が育児や自分のために戻ってきます。育児側では、保育園の利用、一時預かり、ファミリー・サポート・センター(地域の有償の助け合い)、病児保育などがあります。介護で手が回らないときに、子どもを安心して預けられる先を複数持っておくと安心です。
さらに勤務先の制度も忘れないでください。介護休業・介護休暇、子の看護休暇、時短勤務、テレワークなどは、法律や会社の規定で整備されていることが多くあります。「使えるのか分からない」と諦める前に、人事や上司に一度確認を。制度の有無や条件は会社によって異なるため、就業規則を確かめるのが確実です。
「どの制度から使えばいいか分からない」「親の介護も子どもも限界」という方へ。
状況を聞かせていただければ、優先順位と次の一手を一緒に整理します。相談は無料です。
制度と同じくらい大切なのが、身近な人との分担です。まずはパートナーと、「何を・いつ・どちらが担うか」を具体的に話し合いましょう。「察してほしい」では伝わりません。曜日や役割で見える化すると、偏りが減ります。親が遠方なら、きょうだいとの連携も重要です。介護を一人で抱えると、お金や負担をめぐって関係がこじれがち。早めに情報を共有し、費用・対応・帰省などの分担を相談しておくと、後のトラブルを防げます。
そして近年、ダブルケアを専門に扱う相談先も増えています。市区町村によっては「ダブルケア相談窓口」や、地域包括支援センター・子育て世代包括支援センター(こども家庭センター)が、介護と育児の両方をまたいで相談に乗ってくれます。「介護のことは介護窓口、子どものことは子育て窓口」と分かれて、たらい回しに感じることもありますが、まずは地域包括支援センターに「ダブルケアで困っている」と伝えてみてください。窓口の整備状況は自治体によって差があるため、お住まいの市区町村の情報も併せて確認しましょう。
ダブルケアを続ける方ほど、自分のことを最後に回しがちです。けれど、眠れない・食べられない・涙が止まらない・何も楽しめない——こうしたサインが続くなら、それは「頑張りが足りない」のではなく、心と体が限界を訴えている証拠です。我慢で乗り切ろうとせず、早めに立ち止まってください。
誰かに話すだけでも、気持ちは軽くなります。家族や友人、地域包括支援センター、自治体の相談窓口、必要であれば心療内科や精神科も選択肢です。同じ立場の人とつながれるダブルケアの当事者コミュニティや家族会も各地にあります。あなたが笑顔でいられることが、子どもにとっても、親にとっても、いちばんの支えになります。無理を続ける前に、頼れる先に一歩だけ手を伸ばしてみてください。
育児と介護のはざまで、もう限界かもしれない——そう感じたら、一人で抱えないでください。
あなたの状況に合わせて、使える支援と頼り方を一緒に考えます。相談は無料・匿名でも大丈夫です。