親御さんを見送ったばかりで、まだ気持ちの整理もつかないうちに、「実家を相続したら、相続税で一体いくら請求されるのか」という数字への不安だけが先に迫ってくる――そんな方は少なくありません。ニュースやドラマで「相続税で家を手放した」という話を目にすると、実家を継いだだけでこちらも同じ目に遭うのではと、通帳の残高を思い浮かべては落ち着かなくなってしまうものです。
結論を先にお伝えすると、相続税はすべての人にかかるわけではありません。一定の金額(基礎控除)までは課税されない仕組みになっており、実際に申告まで必要になるご家庭は全体の一部にとどまります。「うちみたいな普通の家でも、実家を継いだだけで税務署から通知が来るのでは」と気を揉んでいた方は、まず肩の力を抜いていただいて構いません。とはいえ、実家の土地の評価額や他の財産との合計によっては対象になることもあるため、「たぶん関係ないはず」で済ませず、ご自身の場合はどうなのか、ここで一度数字として確かめておきましょう。この記事では、相続税の基本的な考え方と、申告が必要かどうかを判断するための目安を整理します。
相続税は言葉も制度も独特で、初めて向き合う方が戸惑うのは当たり前です。基礎控除の数字ひとつ取っても「うちのケースだとどう計算するの」と迷って当然の世界です。
相続税は、亡くなった方(被相続人)が残した財産を相続したときに、その財産の合計額に応じてかかる税金です。「相続税」とひとことで言われても、実家の不動産だけの話なのか、通帳の残高まで含むのか、最初はイメージが湧きにくいものですが、対象になる財産には、現金や預貯金、株式などのほか、実家を含む土地・建物などの不動産も含まれます。生命保険金や死亡退職金の一部も対象になることがあります。
ただし、相続した財産すべてにそのまま税金がかかるわけではありません。後述する基礎控除という非課税の枠が設けられており、財産の合計額がこの枠の範囲内であれば、相続税はかからず、申告も原則として不要です。実際に相続税の課税対象になるのは全体の一部の家庭にとどまるとされており、「相続税がかかるかもしれない」と眠れぬ夜を過ごしていた方が、いざ計算してみたら非課税だった、というケースも珍しくありません。とはいえ最終的な判断は財産の内容次第ですので、ここではあくまで目安として読み進めてください。

相続税がかかるかどうかの最初の分かれ目が、この基礎控除です。「結局、うちはいくらまでなら大丈夫なのか」という一番知りたい答えは、次の式で計算できます。
基礎控除額 = 3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数[出典:国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の計算」]
たとえば、配偶者と子ども2人が相続人の場合、法定相続人は3人なので「3000万円+600万円×3人=4800万円」が基礎控除額の目安となります。財産の合計額がこの金額以下であれば、相続税はかからないのが一般的です。
つまり、相続人が多いほど基礎控除の枠は大きくなります。実家を含めた財産の合計額が基礎控除を下回るのであれば、相続税の心配はまずありません。逆に基礎控除を超える部分がある場合に、その超えた分に対して相続税がかかってくる、というイメージです。きょうだいの人数や、離婚・再婚、養子縁組が絡む家庭では、誰が法定相続人にあたるのか数え方自体に迷うこともあります。ご自身のケースで人数の数え方に自信が持てないときは、専門家に確認しておくと計算のやり直しを避けられます。
相続financial財産のなかでも、実家の土地は評価額が大きくなりやすく、相続税を考えるうえで重要なポイントになります。「実家の土地なんて、売るつもりもないのに評価額なんて分かるのか」と戸惑う方もいらっしゃいますが、土地の評価額は、購入時の価格や時価そのものではなく、路線価などの基準にもとづいて算出されるのが一般的です。実際の評価は土地の形状や条件によっても変わるため、おおよその目安として捉えてください。
そして、実家のように親と同居していた住まいの土地などについては、一定の要件を満たすと小規模宅地等の特例によって、土地の評価額を大きく減額できる場合があります。[出典:国税庁 タックスアンサー No.4124「小規模宅地等の特例」]「実家を残したい気持ちはあっても、税金のために手放さなければならなくなったらどうしよう」という不安を持つ方も多いのですが、これは、残された家族が住む場所や生活の基盤を守るために設けられた制度で、適用できれば相続税の負担が大きく軽くなることがあります。
ただし、この特例には「誰が相続するか」「相続後も住み続けるか・所有を続けるか」といった細かな要件があり、ケースによって適用の可否や減額の割合が変わります。きょうだいの誰が実家を継ぐか、まだ話がまとまっていないという段階の方も少なくないはずですが、特例を使うこと自体に相続税の申告が必要となる場合もあるため、「特例で非課税になるから申告も不要」と自己判断するのは禁物です。適用を検討する場合は、必ず税理士などの専門家に確認してください。
「結局、うちは申告しなければいけないのか、いらないのか」というシンプルな問いへの答えは、おおまかに次のように整理できます。あくまで一般的な目安であり、最終的な要否は財産の内容や特例の適用状況によって変わる点にご注意ください。
ここで見落としがちなのが、「税額がゼロ=申告不要」とは限らないという点です。「特例のおかげで払う税金はないと分かったから、もう手続きは終わり」と思い込んでいたら、実は申告そのものが義務だった――というケースは決して珍しくありません。判断に迷ったら、申告が必要かどうかだけでも早めに専門家へ確認しておくと、後から慌てずに済みます。
相続税の申告と納税には期限があります。葬儀や各種手続きに追われるなかで「税金のことまで頭が回らない」と感じている方も多いと思いますが、一般的には、相続の開始(被相続人が亡くなったこと)を知った日の翌日から10か月以内[出典:国税庁 タックスアンサー No.4205「相続税の申告と納税」]とされています。この期限までに、申告書の提出と納税の両方を済ませる必要があります。
10か月と聞くと余裕があるように感じるかもしれませんが、実際には葬儀や各種手続き、遺産分割の話し合い、財産の調査や評価などに時間がかかり、あっという間に過ぎてしまうことが少なくありません。「まだ気持ちの整理もついていないのに、きょうだいと財産の話をするなんて」と気が重くなる方もいらっしゃいますが、遺産分割がまとまらないまま期限が近づくと、対応の選択肢がどんどん狭くなってしまいます。まずは全体の流れだけでも早めにつかんでおくと、後になって慌てずに済みます。
誰が法定相続人になるかを戸籍などで確認し、預貯金・不動産・保険など、どんな財産がどれだけあるかを洗い出します。実家の評価額の見当もここでつけます。
財産の合計額の見込みと基礎控除を比べ、相続税がかかりそうか、申告が必要そうかをおおまかに判断します。微妙なラインなら専門家に相談するのが安全です。
誰がどの財産を相続するかを相続人どうしで話し合い、まとめます。小規模宅地等の特例は誰が相続するかで適用が変わることもあるため、税負担も意識しておくとよいでしょう。
申告が必要な場合は、期限である10か月以内に申告書を提出し、納税まで済ませます。内容が複雑なときや特例を使うときは、税理士に依頼するケースが一般的です。
ここまで見てきたように、実家を相続したからといって必ず相続税がかかるわけではなく、多くのご家庭は基礎控除の範囲内で課税されないか、特例の活用で負担を抑えられる可能性があります。とはいえ、ネットで調べれば調べるほど情報が錯綜して、かえって不安が増したという声もよく聞きます。財産の内容や評価、特例の要件はケースによって大きく異なり、自己判断だけで「かかる・かからない」を断定するのは難しいのが実情です。
相続税について正確に知りたいときは、税理士などの専門家への相談がもっとも確実です。「相談料がかかるのでは」とためらう方もいらっしゃいますが、税の一般的な内容については税務署や、自治体・専門家会による無料相談会といった公的窓口を利用することもできます。本記事はあくまで一般的な説明であり、個別の税額や申告の要否を保証するものではありません。最終的な判断は、必ず専門家や公的窓口にご確認ください。
「そもそも誰に相談すればいいのか分からない」「相続税だけでなく、実家の片付けや手続きも含めて全体を整理したい」という段階の方も、遠慮なくお声がけください。状況をうかがったうえで、確認すべきポイントや、税理士など適切な相談先へとご案内します。
相続税のことも実家の手続きのことも、判断に迷ったときはLINEで相談するという方法もあります。